「まずは食べてみらんね」。さっきまで埋まっていた採れたて玉ねぎを、ポンと手渡した西田恭さん(56歳)。
薄い皮をむくと、白く艶々と輝く玉ねぎが顔を出し、口に入れると甘味が広がり思わず笑みがこぼれます。
「『美味しい』の声が仕事のやりがい。それが聞きたくて、作った野菜を知り合いに配って回りよるとですよ。」と西田さん。
この日は収穫真っ最中。地域の施設(ゆたか学園)の方々が作業に汗を流していました。
「地域交流を兼ねて、苗植えや収穫など人手が欲しいときに手伝ってもらっています」。
西田さんは3年ほど前に、調理師から転身。キツイと思っていた農業だったが、実際に始めてみると
太陽の下で土をいじる楽しさにはまったとか。「青空の下はとっても気持ちがよか。勤め時代に比べて
ストレスは無くなりました」と日焼けした眩しい笑顔で話します。
現在は、玉ねぎのほかに、米、レタス、枝豆、栗南瓜などを作っています。
「仕事をしない日も1日に1回は畑に行って、玉ねぎの様子を見ないと気がすまない」と話す西田さん。
葉の色から玉ねぎの生育状況を確認するそう。
一日の作業内容を決めるときも、葉の色で判断します。また、雑草が生えると玉ねぎの栄養分が取られてしまうので、
草取りは毎日の日課です。
そんな西田さんのこだわりは有機栽培。無農薬にすると手間とコストが見合わないのが現状です。
「有機栽培を基本に、化学農薬の力を借りながら作っています。化学農薬を減らすことは、野菜本来の美味しさを引き出し、
農家のコストダウンにもつながるんよ」。特に、有機栽培で作られた葉物野菜は、味の違いがすぐにわかるそうです。
より美味しい玉ねぎを目指し、農業研修・勉強会・書籍などで知識を深めています。
雑草対策に植えるレンゲを土に混ぜ来年の肥料として利用したり、堆肥に籾殻を混ぜて水持ちを良くしたり、
良いと思ったことはなんでも実践しているそう。
「家庭菜園をしているなら、コーヒーかすを乾燥させてかけると肥料になりますよ」と教えてくれました。
「玉ねぎは“苗半作”と言われるくらい苗が大事。苗から作っていますが、まだまだ納得のいくものはできないですね」。
西田さんは、これからも目標に向かって、日々挑戦し続けていきます。
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